いきおくれ女子いろいろウォッチ

映画の備忘録として

行って帰ってくるだけの物語に何故こんなにも熱狂するのか ー マッドマックス 怒りのデスロード それから、ゾンビ マックス

マッド マックスは昨年6月頃の公開だったので、初見から約一年たちましたが、まだあの興奮は抜けません。
正直、マッドマックスにそんなに思い入れはありませんでした。マッドマックスは子供にはハードすぎました。『ナイトライダー』の方が(お星様になった方ではなく騎士様の方です。)キットがおしゃべりして可愛かった記憶があります。
そんな訳で、映画を見る前に私が考えていたのは「ダークナイトの悪夢の再現で、トム・ハーディがあの変なマスクを映画の間中ずっとつけたままだったらどうしよう…変なマスクはサクッとはずしてイケメン全開で活躍してほしい…」だけだったのです。本当にそれだけが心配でした。
映画を見て、トム・ハーディはサクッとマスクを外してくれたので、本当にホッとしました。

核戦争後の資源が枯渇した近未来、生き延びた人間達は残された資源を奪い合い、荒廃した世界で生きていました。そんな中、イモータン・ジョーが統治する砦では、ジョーは水や資源を独占している独裁者であるにも関わらず、神のように怖れ敬われていました。人々は疑問を持たず、もしくはなにも考えず、妄信し、ただ群がるだけです。人の言う事を鵜呑みにして思考停止になり、自分では何も責任をとらず、ただ待ち続けるだけの人々。そして何も考えず、ただ争い戦うだけのウォーボーイズ達。
そんな中から、フュリオサは、女達は自分の道を自分で選び切り開こうと立ち上がります。それは自分の人生を生きる事でもあります。
そしてそこに異分子として、「ジョー?何それ?」といったマックスが飛び込み搔き回します。
そして、車がガーってなって、どっか〜んってなって…という映画でした。多分。

何故そうなのか、どんな世界なのか、どんな人達なのか、ほとんど説明のない映画でした。セリフも必要最低限しかありません。
でも、映画をみていると、わかるのです。物凄く丁寧に作り込んだ画面や車や服装やメイクから、必要な情報は全て得る事が出来るのです。
とにかく常に追いかけっこをしているか、車が走っているか、銃を撃っているか、車が転がっているか、銃を乱射しているか、爆発しているか、ギター弾いているだけなのですが、全く無駄なシーンがなく、それなのに不思議なことに詰め込み過ぎという事もないのです。ものすごい情報量なのに無駄が全くない、凄い映画です。

物語について、フェミニズム的にみたり色々な見方があるようですが、優れた作品というものはいくつもの見方が出来るものであり、そういった意味でも素晴らしい作品だったと思います。
ただ、私は、監督が一番撮りたかったのは、やはり車がガーって走っていく映画だったと思うのです。でも、それだけでは企画通らないから、今時流行りの要素を入れたのかなと思ってしまいます。
勿論、監督が日頃から興味を持っているテーマだったのだろうとは思います。日頃から意識していないと、女性の描写などはただポジティブで押しが強いだけのステレオタイプなものになってしまい、この映画のしっかりと自立した人間としての描写にはならなかったと思います。エネルギー、水、エコについても、背景として出てくるだけにも関わらず、非常に丁寧に描写されてしました。
それでもやはりこの映画は、狂った車の物語だったと思うのです。

世界観やキャラクターが非常に作りこまれており、きっと監督はいつかこの映画を撮りたいと思って、長年物語を温めていたのだろうな、と思いました。そして、いつかまた新作を見たいと妄想していたファンと最高に幸福な邂逅を果たしたのだろうな、と思いました。

余談ですが、今年の未体験ゾーンの映画たちでは、チラシを見た瞬間に「絶対見よう!」と思い、あらすじもなにも読まずに楽しみにしていたのが『ゾンビマックス 怒りのデス・ゾンビ』でした。どんなに、どんなにアホな映画かとワクワクして見に行ったら、期待通りのアホ映画で大満足しました。若干展開に無理がありましたが許容範囲、というかあの低予算感あふれる映画で、しかもゾンビネタでよくぞあそこまでまとめあげた、と思いました。邦題がアレなので便乗クソ映画の恐れもありましたが、原題は全く違うので、邦題は駄洒落好きのおっさんがつけたのでしょうか?まぎらわしいですが、気持ちはわかるといった感じです。
流星が地球に降り注いだ後一夜で何故か人類ゾンビ化→RH-型だけ何故かゾンビ化しない→化石燃料が何故か使えなくなる。→ゾンビが吐き出すガスが何故か燃料になる→ゾンビを車につないで爆走。
…まぁ、マックスって言いたくなる事もあるかもしれませんね。
さらに、RH-型以外にも何故か助かった人達がいる→組織化してRH-型を何故か捕まえてマッドサイエンティストが出てきて人体実験→人体実験の結果、主人公の妹が何故かネクロマンサー化してゾンビを操る、という展開。そしてラストに何故かイケメンのタイマン。全て一切説明ナシの潔さ、最高です。
ダメな作品って何故か解説したがるのですが、あれは最悪だと思っています。本当にシラけるのであれだけは勘弁していただきたいものです。
そういえば、ニュークス君も以前超イケメンのゾンビをやっていまして、『ウォームボディズ』といいますが、これも面白かったです。ちょっと私のストライクゾーンはハズレているのですが、しかしイケメン、これからの活躍も期待したいです。

そんなこんなで、マッド マックスはいらん解説もウザい説教もない、誠に最高な映画でございました。
時間があったら、立川の爆音でもう一度見ておきたいと思います。