女たちと、男達と、子どもたちー「花咲くころ」「精神の声」あと「ワンダーストラック」
「花咲くころ」は、監督のデビュー作らしいが、非常に端正に作られていて、ちょっと出来すぎとも思うが、美しいいい作品だった。
物語は春から初夏にかけて、ソ連崩壊後の内戦のジョージアで、少女達のまわりで起こる事柄を描く。
14才のエカは、父が不在の家で母と姉と暮らす。エカの親友のナティアは、アル中の父、それから母と祖母、反抗的な弟と暮らしている。
エカは少し小柄で思慮深い少女、ナティアは大人びた感じの魅力的な少女だ。
彼女達のまわりで起こる事件が、その時代のジョージアを語る。
一つ一つが非常に印象的なエピソードなのだが、一つ選ぶとすれば、ナティアの誘拐婚のエピソードと、ナティアの結婚式のシーン。
ナティアに恋をしている少年が、白昼堂々と沢山の人の前から、仲間達と一緒にナティアをさらうのだ。ナティアは抗うし、エカも必死でナティアをかばおうとするが、まわりの大人達はただ見ているだけ。そして、ナティアはさらわれてしまう。女性の純潔が重視される為(映画では、少女達の会話で、処女でなかった為に離婚された女性の話がでてくる。)相手と結婚するしかない。
このエピソードには少し誇張があるか、何かの暗喩である事を祈ってしまうほど酷いエピソードなのだが(あろうことか、少女がさらわれるのを、まわりの大人達は見ているだけなのだ!)実際にジョージアでは誘拐婚によって学校を辞める少女がいた、という事だ。少女の教育は、女性の自立を考える上で非常に重要である。いや、性別に関わりなく子どもから教育の機会を奪う事は、許されないと思う。まわりの大人がろくでもなくても、教育の機会さえあれば、子供は他の真っ当な大人から学ぶことができるかもしれない。
(少なくとも私は、そう信じている。この世から一人でもDQNが減る事を祈って、税金納めているよ、私は。)
そして、そのナティアの結婚式でエカが踊る。民族舞踏なのだが、まわりの冷やかすような雰囲気が「?」だった。映画が終わってから調べたところ、エカが踊っていたのは男性舞踏だったらしい。なるほど、抗議の踊りだったのか、と納得した。
抗議、という事では、ソヴィエト的な女教師の授業を子供達がボイコットするシーンと、その後の色々な事情を抱えた子供達が、それを超えて遊園地で遊ぶシーンは、民族紛争を乗り越えて国内の融和を願う気持ちが込められていたのか?
揉め事、混乱、理不尽な出来事、表面的な平穏、不本意な和解。それらが、いくつものエピソードで繰り返し語られる。しかし、そういったものを乗り越えた先の本当の和平を、理想を感じさせる、初々しく、瑞々しい作品だった。
「精神の声」はソクーロフ特集で上映された。300分超。休憩時間入れて、拘束時間7時間弱?ひえ〜
もっとソクーロフ特集に通うつもりだったが、結局これのみ鑑賞。
タジキスタンとアフガニスタンの国境の紛争地帯に派遣されたロシア兵達を、写す。説明一切なし。
見る前の知識、国境の紛争地帯のロシア兵の映画、見た後に、この映画に写っている兵士達は、ほぼ全員戦闘で死亡と知る。
それだけ。
戦場の風景が映し出され、見回りをしたり塹壕を掘ったり、食事をしたりといった、日常が繰り返される、ひたすらの反復の映像。
モーツァルトとベートーベンと武満。
そして、戦闘、静寂。
映し出されるロシア兵達は、驚くほど幼い。おそらく、10代くらいかと思われるような少年がいたりする。童顔の日本人からすると、おっさんに見える人もいるが、笑顔が幼い。おそらく、大半が20代前半だろう。
「花咲くころ」を見ながら、2,3日前に見たこの映画を思い出した。直接の共通点はない。しかし、ソ連邦解体の流れの中の混乱という事と、戦闘シーンを直接写さずにその精神的なものを表現している、ということから連想したのだろうか。
「花咲くころ」の少女達は、あまりに出来過ぎているが、「ワンダーストラック」の子供達は、非常にリアルだった。
子供特有の傲慢さー嫌な意味ではなく、何も恐れるものなく、自らの正義や希望を貫く、非常に真っ直ぐな純粋さが、心地良かった。
1927年の少女と1977年の少年という、時代が違う少年と少女を中心に物語は進む。二人は耳が聞こえない為、セリフが非常に少ない映画だった。つまり、説明がほとんどない。新聞の切り抜きや本にはさまっているしおり、風景や表情、そういった情報を繋ぎ合わせて物語を読み解いていく。バラバラだった物語が後半一気に重なり合い、絡み合い、物語の全体が見える瞬間は感動的だった。
非常に素晴らしい作品だった。
先週見た11本の映画から、連想ゲームで書いたら、こんな感じ。立て続けに、子ども達の物語を見た。
今週はなんかバタバタ仕事していたら5本しか映画見てない。GW前に、来週は頑張って片付けよう。(ほとんどノルマ。これだからオタクって奴は…)
そんで、GWはすでに30本以上前売り券買ってるんだけど、バカなの?私。多分、9日間で40本くらい映画見るんじゃないかと思うが、アホなの?私。とりあえず、50本以内に収めよう…