爆音映画祭に行ってきたーシング ストリート、それから、はじまりの歌
念願の爆音の「シング ストリート」を見る事が出来た。新宿では、どうしても時間が取れなくて見逃したので、ようやく見る事が出来た。「はじまりの歌」は劇場公開時は見逃したので、今回が初めて。
「シング ストリート」は、大好きなシーンがある。オタクには、かなり泣けるシーンだと思う。
私は、映画を見て本当によく泣く。下手すると予告を見ながらうるっとしているくらい。だから、泣かせにくる映画が大嫌いだ。安い演出がわかっているのに、生理現象で泣いてしまうから。でも、マジ泣きする映画は、本当に心を動かされる映画は、大好き。
「シング ストリート」にはそんな、本当に心を動かすシーンがあった。
ただのボーイ ミーツ ガールではなく、素晴らしい青春映画だと思う。
物語は主人公のコナーが家庭の事情(金銭的な)で高校が転校となるところからはじまる。
不仲な両親(母親の不倫)、不本意な転校(私立から公立高校へ)、経済的に余裕のない家庭(父の失業)、兄は大学中退後引きこもり(だけど、コナーの一番の理解者であり、ロックの師匠。)問題は山積み。
転校先はカソリックの公立校で、厳格な校長や乱暴な同級生に目を付けられてしまい、不穏な始まり方をする。
しかし、学校の前でたたずむ魅力的なラフィーナを口説く為に咄嗟に口をついた嘘「僕達はバンドをやっていて、今度ビデオを撮影する。モデルとして出演して欲しい。」を実現する為、バンドをつくり、曲を作り、友達が出来て、コナーは変わっていく。
そして、映画的には中盤の山場くらいかもしれないが、私的にはこの映画の最高の見せ場、アメリカのプロムをモチーフにしたMVを撮影するシーン。
MVは、高校の体育館で撮影をする。
コナーの目の前にあるのは、MVに出演するエキストラのクソダサい同級生達と、冴えない自分達、しみったれた体育館。コナーの心の内の憂鬱は、ついに別居となった両親、尊敬しているが心配もしている兄。
しかし、美しいラフィーナさえいれば、そんなくすんだつまらない現実も乗り切る事が出来るのだ。
コナーはラフィーナが現れ、いつものように自分のこのしょっぱい現実を忘れさせてくれる事を待つ。
しかし、ラフィーナは来ない。
みんなは、体育館で撮影出来る時間には限りがある、ラフィーナは来ないから撮影を始めよう、と言う。
ラフィーナは、来ない。
ラフィーナには、車を持っている年上の恋人がいて、2人でロンドンに行く約束をしている事を、コナーは知っている。しかし、コナーはお構い無しにラフィーナに恋していた。なんだか、最近いい雰囲気でいけるんじゃないか、と思っていた。
だけど、ラフィーナは来ない。
ついに撮影がはじまる。
そして、ラフィーナは来ないのだ、とコナーが受け入れた瞬間に、世界は変わるのだ。
それまでは、バンドに打ち込む事で辛い現実から逃げる事が出来たし、なにより美しいラフィーナが様々なインスピレーションを与えてくれた。
しかし、ラフィーナは来ない。
だから、その事を理解した瞬間に、コナーは自らの想像力で、自らの想像力だけで、くすんだ冴えない現実を、鮮やかな世界へと変化させるのだ。
まじ泣きします、あのシーン。
妄想ではなく、空想。
ただ想像力だけで世界を作り変えるのだ。
ラフィーナ(幻想)が現れる瞬間、だーっと涙がこぼれたよ。
友達沢山いて、素敵な恋人がいて、ウェ〜〜イな青春をお過ごしになった皆々様におかれましては、私が何を言っているのか理解し難いと思いますが、あのシーンはぼっちのオタク泣かせ。
その後、本番のプロムでのライブは、大いに盛り上がり大成功する。そこでは、本当に盛り上がっている沢山の観客がいて、反逆精神あふれるロックなパフォーマンスがあり、そして本物のラフィーナがくるのだ。そこには空想はなく、希望通り上手くいかなくても、それでも魅力的な現実があるのだ。(これが、この映画の本当の山場。)
それにしても、爆音上映の不思議なところって、非常に強く感情を揺さぶられるのだよな。あれはなんなんだろうか。初爆音からずっと考えているのだが、不思議だ。これについては、また書こう。
とにかく、爆音シングストリート、最高だった。通常上映より当者比1.5倍くらい泣いた。
「はじまりの歌」も、いい映画だった。こちらは、大人のための現代のおとぎ話。ゆっくり、じっくり楽しみたい作品だった。