いきおくれ女子いろいろウォッチ

映画の備忘録として

逃げる。ーフロリダ プロジェクト、ヘンリー フール トリロジー、あもーる あもれいら とか

6/1金曜日の映画の日は「フロリダ プロジェクト」を見てきた。

先週はヘンリー フール トリロジーをずっと見ていたので(ポスターもろた。)、映画を見終わってから、あぁ、今週は"逃げる"映画の週だったなぁ、と思った。4本とも見ている人にはご理解いただけるはず。

 

フロリダ プロジェクトは、サブプライムローン後の貧困層の子供たちが主役の物語である。

主人公の少女・ムーニーはディズニーランドの近くのモーテルで母親と暮らしている女の子だ。家は無く、母親は定職についておらず、ボランティアが配布するパンや友達のお母さんのおすそ分けで日々の糧を得ているような状況だ。モーテルには、同じように住み着いている人達が沢山いる。彼らは人種も境遇も様々だが、共通点は明日の生活費にも事欠くような貧しさにある。そんな、モーテルでの生活を、子供達の視点から描いた作品だ。

 

映画を見ていて、一番強く連想したのが、岡村淳監督の「あもーる あもれいら」だ。岡村監督は、ブラジルに移住してドキュメンタリー映画を撮っていて、たまに日本に帰国して上映会をやってくれる。(このところ、見逃してしまってばかり…)「あもーる あもれいら」は、ブラジルの貧しい家庭の子供達が通うキリスト教の保育園の1年間を追った3部作のドキュメンタリーである。(初めて見た時は第2部までしか出来てなくて、完結編を見る事は出来るのか?と思っていたけど、無事見る事が出来た。あれは何年前だ?)

「フロリダ プロジェクト」の方が、より悲惨なある出来事を描いているのだが、「あもーる あもれいら」の方がキツい現実だ。リアルなのだから当たり前かもしれないが、どんなに天才的に演技が上手くても、現実の重みには及ばない。残念ながら。

「あもーる あもれいら」で一番印象に残っているのが、聖書の一句を子供達がそれぞれ暗唱する発表会?の時のシスターの言葉。「あの子達は日常で非常に汚い言葉に触れている。一瞬でもいいから、清らかな言葉に触れさせてあげたい。」確かこんな感じだったと思う。

色々な子供や、親達が映画には登場するのだが、その中でティーンエイジャーの母親が出てくる。離婚したシングルマザーで、子供が確か2,3人いたと思う。その母親の言葉の乱暴さは凄かった。字幕でアレなのだから、本当はもっと酷いのだろう。そんなのを見ると、シスターの言葉の重み、思いに胸が痛くなった。

 

「フロリダ プロジェクト」を見ながら、やはりそこを連想した。

ハリーは娘のムーニーにとって愛情に溢れた母親かもしれない。2人は非常に強い絆で結ばれており、幸せそうだ。

しかし、ハリーは自堕落で、社会的に正しい振る舞いをすることが出来ない人間としても描かれている。ムーニーも、大人を小馬鹿にした、恐らく常識的な人間を非常に苛立たせる行動をする。それは、母親のハリーとそっくりな行為だ。2人の行動は、2人の間で繰り返される。

汚い言葉や愚かな行為が親子の間で反復されるのだ。そこには、暗澹たる未来しか想像する事が出来ない。

児童福祉局(だっけ?)の介入は、当然の結末であり、ハリーはムーニーを手放したくはないが、心のどこかでは、それを予想し、ムーニーの為にそれを望んでいたのではないか。

そしてラスト、まさかのムーニーの親友のジャンシーの大活躍。

児童福祉局から逃げてきて、ただ泣きじゃくるムーニーを前に、難しい顔をするジャンシー。ムーニーもこの結末を予想していたのだろうが、それでも、言葉に出来ない思いに泣きじゃくっていると、ジャンシーは何も言わず、何も聞かず、ムーニーの手を引いて逃げ出すのだ。

私は、それまで忘れていたのだが、そういえば映画の最初の方で、ジャンシーのおばあちゃんが、「娘が15才で子供を産んだのだが、子育てなんて出来ないから私が育てている。」って言っていたんだよ。おばあちゃんに育てられたジャンシーは、常識的な振る舞いをする事が出来る。チビっ子ギャング ムーニーの後ろを追いかけているだけの、ボンヤリした子だと思っていた。しかし、ジャンシーも母親を取り上げられた子供だったのだ。多分、それが一番正しかったのだろうが、それでも、きっとそれは耐え難い事だったのだ。

何から逃げているのか、どこに向かって逃げているのか、それはわからない。ただ、ここではない何処かへ逃げて行こうとする、逃げ出さずにはいられなかった2人の子供の、その逃避行の背景が楽しい夢の国ディズニーランドなだけに、とても哀れだった。

しかし、2人の小さな背中は、大人達の都合で翻弄される彼らの運命に抗うように、そして私の勝手な哀れみなど弾き飛ばすかのように、真っ直ぐで自信に満ちたものだった。

自己を肯定する事に根拠など必要ない、ただ生まれて、そして真っ直ぐに生きていくのだということを強く感じた。

いい映画だった。

 

それに比べて、ヘンリー フールのダメな事、ダメな事。おっさん、逃げて逃げて一体何処に行こうとしているんだ、って感じだった。それにしても、1と2の落差が凄かった。え、いきなりスパイ?というあの展開。なんじゃ、ありゃ?愉快すぎる。

とにかく面白くて、夢中でアップリンクに通ったら、ポイントたまって、ポスターもろた。ありがとうございました。