いきおくれ女子いろいろウォッチ

映画の備忘録として

うぇ〜〜いーカメラを止めるなとかファミリーウォーズとか、日本人の若手映画監督の作品、そして入江悠礼讃

なんだか「カメラを止めるな」が、物凄く盛り上がっているようですね。

暑くなってからコンディションが良くなくて、映画を見るペースが落ちていた。特にコンテンツ系の映画は全く見る気がしなかったので、すかしたミニシアター系のさらにすかしたアート系(お恥ずかしい事に一番好きな分野。幻想的な作品が大好き。)を中心に見ていた。ハリウッド映画の、大きい音や過剰な音楽と演出が、全く受け付けなかった。(でもMIPは死ぬ気で見てきた。あれは見逃せない。面白かった。トム・クルーズ最高)

この夏見た映画で一番素晴らしかったのは、遠藤麻衣子の「TECHNOLOGY」。この作品は本当に良かった。まるであの世とこの世がつながるような感覚の作品で、涙が止まらなかった。私は美しい花の物語だと思ったのだが、解説を読んだら、かぐや姫だった。(…「かぐや姫の物語」見たいなぁ。ジブリで一番好きなのはナウシカかぐや姫なんだよな。)遠藤麻衣子監督は、今後チェックしなくちゃならん。アテネフランセとか写美辺りでやってくれそう。

さて、カメ止めです。なんか凄い盛り上がっているけど、よっぴーはほめてるし、監督の父上のFacebookに引いてしまい、完全に見る気を無くしていた。そんな時になんかゲスい盗作話が聞こえてきたので、これは見に行かねば!やはり映画オタクとして流行りものは押さえねば!!と、あわてて見てきた。シネコンではなく、寂れた雰囲気の中で見たかったので、相鉄ムービルにした。(30年以上前からある老舗映画館。横浜駅唯一の映画館で一応109系列でありながら、いつでも会員は1,100円、つまり、いつ行ってもガラガラに空いている。女子トイレなんて、個室20個くらいあるのに、洋式1個よ。あとは全部和式。スクリーンも席数が多くて、客席が段差になってない。昔風の作りの映画館。壊すのにお金がかかるから、設備投資せずにとりあえず営業しているような感じ。)さすがに満席にはなってなかったけど、子供の頃以来見たことないほどの客の入り。いい雰囲気だ。

映画は、面白かった。最後まで見落としがあってはならない!と思わせる展開、そして飽きさせないように細部にまで手を抜かず作られていて、楽しめた。そういうところはプロの仕事なんだけど、低予算映画だからチープな感じがあって、それがまたいい味わいだった。『会いに行けるアイドル』的な映画だったと思う。若い子にはこういう感じが受けるんだなぁ、と思った。

今年は「枝葉のこと」とか「大和(カリフォルニア)」とか、若手監督が作った神奈川県央ローカルの良質な映画が公開されているのだが、どちらも路地裏の物語で孤独や傷に向き合うタイプの作品だった。その閉塞感は、空族のロードサイドの物語にも通じる、渇いた空気だった。(地方の人には神奈川は東京のオマケ的に言われるが、神奈川県って東京とは違うのよ。東京郊外の、一地方都市なのよ。)そういう自己に向き合ったドライで真摯な映画より、ウェットでちょっとええ話の方がうけるんだなぁ。うーむ。

さて、カメ止めと似たような、コンテンツ映画的に作られながら、全くうけるとは思えないのが「ファミリー☆ウォーズ」。感想は、また、馬鹿な映画作りやがって…といった感じ。ものすごいパワーで、呆れるほど馬鹿で、面白かった。

とにかく思い付く限りのアホなネタを、より露悪的に仕上げて、これでもかとぶち込むという…馬鹿じゃない?以外に言う事はないスタイルの映画。ただ、阪元監督の凄いところは、私が今まで見た6本の映画の中で、こんだけアホなネタをこんだけぶち込んできやがりながら、同じ事を繰り返している、という印象は受けないところだ。これ結構凄いと思う。

映画は、若さ故か、少し軽い。人と違う事をしよう、面白いものを作ろう、というあふれるガッツを感じるが、まだネタとして消化しているだけの、コンテンツ映画としての印象が強い。これは役者陣にも言える事だが、アイデアを出して色々試している段階のようだ。欲望でも焦燥でもなんでもいいが、自分の内側から湧き出てくるものではない、頭で考えて作っている印象がある。今、この手の映画を見るコンディションじゃないから、なんか、嫌な映画オタクの感想になっちゃうな〜。

映画オタクとしては、10年、20年スパンで生ぬるく見守りつつ今後に期待、といった感じ。

例えば、入江悠監督は、サイタマノラッパーからチェックしていて、もとから大好きだったけど、「太陽」そして「ビジランテ」で、さらに好きになった。あの2作で化けたなぁ〜と本当に嬉しかった。(ちなみに、ジョーカーゲームは見ていません。)はてなブログで例えると、モビルスーツのぶちょーがJD語りをやめていきなり武闘派に転向したかのような衝撃。よくわからない例えだと思うかもしれないが、それくらいの衝撃。(入江ぶちょーと呼びたいくらい芸風が似ていると思っているのは、私だけか?)確かに、SRにも鬱屈とした暴力性があったが、こんな風に化けるとは思わなかった。今一番期待している、メジャーもいける日本の若手映画監督。(ちなみに、ジョーカーゲームは見ていません。)

阪元監督は、入江監督のような屈折はあまり感じず、非常に素直な印象がある。のびのびと馬鹿な事をしているな〜馬鹿だな〜ホントに馬鹿だな〜いやここまで馬鹿だと逆にすごいな〜、とほのぼのとした気持ちで見守っている。まだ、その暴力性を語るほどではなく、出し切っていない。今しか出来ない事をやり尽くし、その後に何を出してくるのか、それを楽しみにしたい。10年後でも20年後でもいいが、ま、出来たら早目に頼んます。

 

今年のホラー秘宝は、これまでと色々と違うものだった。毎年初日の最終上映回はリバイバル上映で、高橋ヨシキさんと寺沢ホークさんのゆるいトーク付きだったのだが、今年は阪元劇場だった。毎年千葉監督の新作が上映されていたのだが、今年はなかった。そして、毎年千葉監督と平山先生のトークは、映画の話を全くしない平山先生相手に敬語で応対しつつも苛立つ千葉監督を、10数人のおっさんとおばちゃんが生温かく半笑いで見ていたのだが、それも今年はなかった。去年いた人、今年の新しい人。色々なものが、様々に変化していく。生きているってこんな感じなんだな、と思った。夏の終わりはしみじみと、おセンチになってしまうね。